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2008年04月24日

先日、駅の改札を通ってホーム行きのエレベーターを待っていたら、70歳ぐらいのご婦人に声を掛けられた。

「あの、お節介なようですけれど・・・」

トントンと肩を叩かれたので、何だろうと驚いて振り向くと、ご婦人は周りの人に聞こえないように、小声で気遣い囁くように続けた。

「後ろ、洋服の後ろのボタンが開いていますよ」

「え」

「ほら、一番上のところ」

「あ・・・」

ご婦人は私の着ているワンピースの一番上のボタンを閉め忘れていることを教えてくれたのだった。

どうしよう。

そこの所はハイネックできついからと、わざとボタンを留めずにいた箇所なのだ。

「あ・・・・・。」

今度は私の方が小声で囁くように、わかっていて開けていることをご婦人に伝えた。

もっと機転がきけばよかった。そうすれば、ボタン一つ留めるだけで済んだのに。突作のことだったのでそこまで頭は回らなかった。

もうご婦人は、同じようなことがあっても知らない人に声を掛けないだろう。悪いことをしちゃったなとホームに上がったあとも一人後悔をした。

「大人の嘘」をわきまえている人を素晴らしいと思う。

世の中には、嘘が吐ける体質の人と吐けない体質の人が居て、私は明らかに吐けないタイプだ。悪い人間じゃないとは思うが、時に正直に言わなくても全くいいことでさえ、そのまま答えてしまうことがある。

「嘘吐き」と言うと、なんだかあまりいいイメージはないが、基本的に頭が良く脳みその反射神経がいい人のことだと思う。素質がない人間には手が届かなくても、素質を持ち心を磨けば、最上級の「大人の嘘」をわきまえることが出来る。

開いたワンピースの首元がスースーとした。

ご婦人の姿はなく、ホームで電車を待っていると少し肌寒い春の風が吹いて抜けて行った。

Posted by 吉川みき : 2008年04月24日

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